HISTORY
2021.08.17

アウトドアとインドア

開発者の横顔|村上祐資

DAN DAN DOMEの開発者のひとりである村上は、これまで南極やヒマラヤなど、極地とよばれる厳しい環境に自らの身を置き、人間の暮らしの原点を踏査してきました。そんな村上の活動は「究極のアウトドア」と捉えられがちですが、実は「究極のインドア」なのです。

限られた時間のなかで、緻密な計画を立て、目標地点に到達するために行動する冒険家たちと異なり、村上は限られた基地空間の内部で、仲間とともに日常業務をこなし、帰りの日がやってくるのを待ちます。不要不急の野外活動は許されず、次の補給があるまではそこにあるリソースだけでやりくりする。意志の力でもって極地に挑むのではなく、気分の力が折れぬよう「よく食べ、よく寝て、よく笑う」を整える工夫が何より大切です。

そんな非日常の世界のなかにある日常は、私たちを支える社会システムが、「物事が確実に進む」という不確実な前提と理想の上に立っていることに、気づかせてくれるのです。

不便さを楽しむアウトドアと、望まないのに不便さを強いられてしまったインドアの生活に求められることは、必ずどこかが違うはずだ。そんな「似て非なるもの」を見抜く目を養うために、村上は長く極地で生活を送ってきたのです。

マイナス43℃、ある日の村上(2010年/南極)