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宇宙開発向け閉鎖環境検証モジュール「DAN DAN DOME SPACE」を開発
DAN DAN DOME の新たなラインナップとして、宇宙開発向けの閉鎖環境検証モジュール「DAN DAN DOME SPACE」を開発いたしました。2021年秋に販売を開始した、ダンボール製テント「DAN DAN DOME」に、今回開発した連結パーツを組み合わせることで、空間(Space)を拡張することが可能となります。
宇宙開発の加速とリスク
昨今、民間企業における有人宇宙飛行や、宇宙資源法の成立、13年ぶりの宇宙飛行士の募集開始など、宇宙開発における様々な動きが加速しております。
一方で、宇宙では、地球を発つ前に、あらゆる「想定外」を「想定内」にして備えておくことが重要です。また有事のみを中心に考えて備えをしてしまうと、クルーの心身は平時でも疲弊してゆきます。最前線の現場ではあらゆることの切り分けが困難で、一口にリスクとはくくれない多様な背景が存在しています。例えば、リスクコミュニケーションとは避けられることを「未然に」防ぐことであり、クライシスコミュニケーションとは起きてしまったことの被害を「最小限に」食い止めることですが、両者の対処や意思決定の道筋はそれぞれ違います。
宇宙に行く前に必要な検証
宇宙空間での想定外の事象への対応を事前に検証するためには閉鎖環境における検証や実験が必要となります。一方で、大々的な閉鎖実験場を作るにはコストや時間もかかり、維持や運営にもかなりの工数が必要となる上に、様々な状況を見据えた拡張性を持つことは難しいのが実情です。
宇宙開発向け閉鎖環境検証モジュール「DAN DAN DOME SPACE」
DAN DAN DOME SPACEは、南極越冬隊や火星実験生活など、1000日以上の極地での踏査経験を持つ、FIELD assistant代表の村上祐資氏が長年フィールドで培ってきた閉鎖環境検証ノウハウを基に設計されています。使い捨てを前提とした組み立て式の工法を採用し、またダンボール素材でありながら、宇宙を模した実験生活にも充分耐えうる拡張性を備えています。
村上氏は次のように語ります。
「民間企業や個人による宇宙参入ブームは、サバイブ(生き延びる)一辺倒だった宇宙の世界に、アライブ(生きている実感)という、新たな視点や気づきを持ち込んでくれます。しかし一方で「最先端」や「挑戦」という甘美な響きは、僕たちの目を曇らせてしまうことがあります。非日常の環境である宇宙に、さらに非日常の要素を持ち込むのではなく、慢心や思い込みを排し、いつの世もこぼれ落ちてしまう「普通のこと」を忘れ物にしないことが大切です。」
DAN DAN DOME SPACEは、東洋製罐グループの中でダンボールの製造販売を行う日本トーカンパッケージ株式会社と、村上祐資氏で共同開発した、拡張性のある閉鎖環境検証モジュールです。連結パーツと戸枠パーツを利用し、居住空間を増やしたり、倉庫や食堂といった用途に応じたレイアウト変更等も可能となります。
船外活動(EVA)基地建設ミッションとしての有効性
DAN DAN DOME SPACEは、月や火星での基地建設ミッションを想定した、船外活動(EVA)訓練のツールとして活用することもでき、そこではクルー自ら空間を作りあげ、チームビルディングを行っていくことから始まります。フィールドでも特殊な工具や脚立などを必要としない一方で、完成までには複数人の仲間と会話や助け合いが必要となるように、各パーツの大きさや組み立ての手順が設計されています。過去には海外の火星実験生活において、クルーが模擬宇宙服を着用した状態で DAN DAN DOME のプロトタイプの組み立てテストを実施し、人間工学的な動作や集団行動の検証ツールとしての有効性も示されています。
FIELD assistantとの実証実験
今後は、FIELD assistantと、宇宙と地上管制の現場を想定した、遠隔地からの支援のあり方とモニタリング対象となる基地の内部空間の関係を検証すべく、 DAN DAN DOME SPACEを活用した実証実験を行っていく予定です。今後も東洋製罐グループは、宇宙開発における包装容器の課題解決を進めると共に、その知見を活かして地球上における資源循環等の課題解決を進めていきます。